わたしの人生これからだ
(こういう書き出しは味気ないが)読者のみなさんにとって、ゴルフとはなんでしょうか。
「まあ、そうかたく考えるな」とか「見るだけ」の人もいれば、「人生に欠くことのできないもの」とゴルフを持ち上げる人もいるだろう。
わたしにとっては、ゴルフは「旅の道具」。年々、狭くなる行動範囲ではあるが、旅は自分を広めてくれる。
ハーフセットを車に積んで旅に出る。ゴルフをやるかやらないか予定は未定。予約も取らない。時間と体調が合えば、ちょっとばかし気力を振り絞ってコースに出かける。そう、わたしのゴルフは旅の道具。釣りや酒と同じレベルである。
そのむかし、油絵をはじめて旅の伴としたけれど、孤独すぎて、なんだか自分がみじめになってきたのでやめた。歴史をたどり名所旧跡を歩いて小説を書いてみたが、才能のかけらもなかった。
釣り、酒、ゴルフ、すべてがハンデ30程度。それでも友人ができる。それが、世界が少し広がったことだと思う。
自分の旅ゴルフをつくってゆこう。
ゴルフ場のない県はないと思う。メンバーの紹介が必要な名門コースは避けよう。そういうコースはメンバーのためのコースだから。パブリックに近いコースのほうがいい。お手ごろなのはショートコース。できればレストランつき、練習場つき。ひとりで来ている人がいたら同伴をお願いしよう。ゴルフの話題だけでなく、街の様子を生の声でゲットしよう。スコアカード、マーカー、グリーンフォークなどがあったらぜひいただいて来よう。同伴者と気が合えば、写真なんか撮ってあとで送ってあげれば喜ばれる。
当然、ゴルフの上達は早くなる。初顔合わせの人とまわるわけだから、下手なプレーはするまいと思うのが人情。とくにマナーが身につく。
今回、機を見て京都の北部、丹後半島にある伊根町に出かけた。ハーフセットと釣り竿を車に乗せて。
わたしにはトランプのジョーカーが一枚ある。それは「信用金庫」という小道具。朝9時に訪れたのは、京都北斗信用金庫伊根支店。支店長が街の様子を話してくれた。
ゴルフ場は、近くに宮津カントリーがあって、伊根支店でもよくコンペに使うそうだ。運悪くその日は雪でクローズだった。
伊根は「舟屋の里」と呼ばれ、伊根湾の景色は現実離れしていた。人里離れた場所なので、交通の便はよいとはいえないが、それがためにこの文化は壊されなかったのだろう。そしていま、街の人々はその文化を誇りに思い、守り続けている。
釣りとゴルフは、この次のためにとっておいた。支店を出ると、駐車場で支店長がお客に声をかけていた。伊根で旅館をやっている今井さんという方で、ゴルフもなかなかの腕前らしい。ふたりの会話は終始笑顔だった。
街には郵便局と農協がひとつずつ。京都北斗信金の独壇場ではあるが、それだけにこの地域における責任も重い。
退職金をもらって、一生に一度の豪華旅行もいいけれど、自分のやってきたことを旅の道具として、国内を何度も旅するほうがわたしは好きだ。
石川勝美
●いしかわ・かつみ──息子・遼のコーチ役として各地に帯同しながら、執筆、講演活動などを精力的にこなす。『石川家の子育て』など著書多数。ゴルフをはじめ読書、写真、釣り、旅行、競馬、家庭菜園など多彩な趣味をもつ。1956年生まれ。

▲伊根北斗信金の支店長と今井さん

▲伊根湾を臨む。ここは「舟屋の里」
この記事が気に入ったら
SNSでシェアしましょう!