連載コラム

タケ小山のオレにいわせろ!

ツアー会場で気になる同伴競技者への配慮を欠いた応援。応援される側にも責任はあると思うが…

2016/5/24 21:00

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イラスト=北沢夕芸

 ハローエブリバディ!最高のゴルフシーズン。ゴルフしていますか?私はといえば、最近、女子ツアーのライブ中継解説のお仕事が増え、試合中のツアー会場を走り回っているわけですが、最近、どうしても気になることがあるので、ひと言いわせていただきたい。

 それは、「観戦マナー」について。ひと口に観戦マナーといっても、絶対的に正しいものがあるわけではない。例えば、米ツアー「フェニックスオープン」のTPCスコッツデール16番パー3。世界屈指のスタジアムホールとなるここでは、すべての選手がどんなプレーをしようと、ギャラリーは大歓声を上げ、祭りのように異様に盛り上がる。試合なんて見ていないかもしれないが、ここではこれでいい。この興奮を体験するためだけに、毎年チケットは飛ぶように売れるのだから。

 これと相反するのが「マスターズ」の静寂。ときどき響き渡る大歓声は、名プレーが起きたときだけ。奇跡のシーンへの惜しみない歓声を送る以外、パトロンはかたずをのんで選手のプレーを見守っている。ここでは、コースを走り回る人もいなければ、好きな選手のバナーを掲げる人もいない。

 はたまた、「ライダーカップ」のギャラリーは、自国のプライドをかけた試合に、まるで戦争のような応援をする。「全米オープン」では、アメリカ人以外の選手は完全アウェイの扱いを受ける。しかし、だ。欧米ツアーで、観客としての基本的なマナーを乱すファンはほとんどいない。

 日本はどうだろう。ツアーの成長とともに、ギャラリーの質も上がり、さすがにAON時代のような、他人のミスに拍手をするギャラリーはいなくなった。

 でも、お気に入りのプロだけを、ときには大声で、ときには群れを成し、大きなバナーを掲げて選手と共に大移動する光景はちょっと幼稚だ。もちろん応援するのはいいことだし、会場に足を運んでくれるファンは貴重だ。でもね、同伴競技者のプレーは無視。お目当てがホールアウトしたらさっさと移動するというのはいかがなものか。応援された選手も選手だ。同伴競技者を配慮して、自分のファンに注意するのも仕事ではなかろうか。

 まあこれが、いまの日本のゴルフに対する理解度を示しているのだろう。でも、アイドル歌手ばりの応援を容認し、その人気に頼っているようでは、行く末が心配なのだが…。

試合ごとに観戦する楽しみは違う。でも、選手をリスペクトできないギャラリーと、それを注意できない選手のいるツアーに発展と成長があるのか?




マスターズのコースマップに書かれたボビー・ジョーンズの言葉




毎年、マスターズでパトロンに配られるコースマップには、こう記されている。「ゴルフでは規則と同じくらいにマナーとエチケットが大切です。選手のすばらしいプレーには拍手を送るべきですが、他の選手が不愉快になるような応援は慎むべきです。ゴルフを愛する人がもっともやってはいけないことは、人のミスや不運を喜ぶこと。マスターズのパトロンがそのようなことをするはずもないと思いますが、もしあったなら、完全に除外しなければなりません」ボビー・ジョーンズ(1902-1971)。写真=タケ小山



タケ小山
本名=小山武明(こやま・たけあき)/1964年生まれ。プロゴルファー、ゴルフ解説者。テレビ「サンデーモーニング」(TBS)ほかラジオやコラムニストとしても活躍。東京都出身。

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