ほんのちょっとのストレッチや運動をできればいいね
カラダへの先行投資は歳をとってから差が表れる
――今回取材させていただいて、間もなく73歳とは思えない、若々しくてパワフルなゴルフに驚かされました。どうしてそんなにお元気なんですか?
青木 そんなことないよ。若いころよりも飛距離は落ちたし、スコアも出ない。若いころのイメージでプレーして失敗したときには、自分の年齢に気づかされるよ。
――もちろん30代、40代のころと比べればそうかもしれませんが、世間一般の70代の方と比べると超人的です。フォローとはいえ、270〜280ヤード飛ばしていたホールもありました。
青木 そりゃあオレはプロゴルファーだから、カラダには気を使っているからね。それなりにトレーニングはしているし、早起きして1時間のストレッチと30分の散歩は毎日の日課にしているよ。
――やはり日ごろの努力の賜物ということですか。
青木 努力といえば努力だけれど、先行投資だと思えばそんなに苦労には感じないよ。動けなくなったり病気になってから何かをするのか、そうなる前にやっておくかだけの差。これは長くゴルフを楽しむ秘訣でもあると思っているんだ。アマチュアだって同じだよ。
――でも、普通のアマチュアには、ゴルフのためになかなかそれだけの努力はできないように思います。
青木 アマチュアなら、オレみたいにしっかりやらなくたっていい。オレはカラダが資本のプロスポーツ選手だからキッチリやらなきゃいけないけれど、ちょっとの散歩やストレッチなら誰でもできるだろう。歳をとっても好きなことを続けたいと欲張るのなら、そのくらいはやらなきゃダメ。でも、それだけでゴルフができる健康寿命は相当延びるし、やったらやったなりに長く楽しめるのが、ゴルフのよさだと思う。
――たしかに、70歳をすぎても楽しめるスポーツは、ゴルフ以外にないかもしれませんね。
青木 でもこれは若い人にも言えることなんだ。ちょっとずつでいいから若いころからストレッチや体力づくりをやっておけば、オレたちの年齢になったときに差がつく。ぜひ、積極的に先行投資してほしいね。
――ほんの少しの先行投資で、老後の楽しみが大きく増えるというわけですね。
青木 若いころのようにはできなくても、歳をとったなりのおもしろさがあるのがゴルフ。歳をとってたくさんの経験を積むことで、若いころにはできなかったことができるようになることだってある。だからオレはいつも「ゴルフは歳をとらない」って言うんだ。
――アゲンストの池越えパー3で見せたパンチショットはお見事でした。あれこそ「歳の功」ということでしょうか?
青木 バカヤロ、若いころならもっとビタッと寄せてたよ(笑)。でも、アマチュアの場合、そういう喜びはプロよりも大きいだろうね。経験を積んで上達することで、飛距離は落ちたのにスコアはよくなっている人は大勢いる。オレ自身、まだ完成したとは思っていないんだ。アマチュアなら、いくつになったって上達の喜びは味わえるはずだよ。
欲と好奇心をもって失敗を恐れずに挑戦してほしい
――いくつになっても上達する喜びがあるというのは素晴らしい。
青木 70を過ぎてもゴルフはいつも新鮮だからね。同じショットは二度とない。もし同じピン位置のホールに、同じティグラウンドから打つとしても、気温や風向きはもちろん、芝の生え具合もグリーンの硬さも違うし、自分の体調だって違うんだから、それは全然違うショットになる。だから普段からよく回っているコースをプレーしていても、発見もあるし悩みもする。そのたびに「こういうことを試してみよう」とか「こう打ったらどうなるかな」と、いつも試して実験しているんだ。
――その結果、成長し続けることができる。
青木 そう。アマチュアの人たちに伝えたいのは、そういうことを感じながらプレーしてほしいということ。同じホールに行ったら機械的に同じ番手を持って同じところを狙うんじゃ、おもしろくないし成長もしない。失敗したっていいんだよ。試さないことはできるようにならないし、失敗するから次へのヒントが生まれる。
――失敗は成功の母、ですね。
青木 日常生活で、失敗覚悟で挑戦する経験ってあまりできるものじゃない。仕事だったらなおさらだと思う。でも、ゴルフだったらそれができるはず。そういう経験は、単にゴルフがうまくなるというだけじゃなくて、人間としても成長につながるんじゃないかな。前回も言ったけど、「完成=完全に成し得たと」思ってしまったらそこで成長は終わる。いくつになっても好奇心、そして欲をもってプレーすることが、長くゴルフを楽しむ秘訣だよ。
この記事が気に入ったら
SNSでシェアしましょう!