ニュースだけじゃ伝わらない米女子ツアー選手たちの魅力を毎月、現地からレポートします!
文・写真=南しずか
女子ゴルフ界を背負う17年世界女王候補はこの3人!
11月12日現在、16年度の米女子ツアーで開催された32試合のうち24試合の優勝者は、なんと24歳以下である。特筆すべきは、この3人だろう。賞金ランキング1位のアリヤ・ジュタヌガーン(20歳)、2位のリディア・コー(19歳)、3位のブルック・ヘンダーソン(19歳)と、3選手の平均年齢は19・3歳である。このほぼ未成年トリオで、今季メジャー4勝を含む計11勝を挙げている。
アリヤ・ジュタヌガーン Ariya Jutanugarn
1995年生まれ。170cm。16年「ヨコハマタイヤLPGAクラシック」で米女子ツアー初優勝を決めると、その後3連勝。同年の「全英リコー女子オープン」でメジャー初優勝を果たした。タイ出身。
リディア・コー Lydia Ko
1997年生まれ。165cm。14歳で豪州ツアーに勝ち、同年米女子ツアー「カナディアン女子オープン」を制して米ツアー史上最年少優勝記録を塗り替える。15年度世界ランク1位になった。韓国出身。
ブルック・ヘンダーソン Brooke Henderson
1997年生まれ。163cm。アマチュア時代、カナダのタイトルを総なめ。14年にプロ転向し、16年「KPMG女子PGA選手権」でメジャー初制覇。18歳での優勝は大会最年少記録。カナダ出身。
米ツアー歴2〜3年の若い選手がここまで上位を席巻するのは、米女子ゴルフ史上でも珍しい。16年度は「世代交代」が如実に表れた衝撃の1年間であった。
米ゴルフ雑誌『ゴルフウィーク』のシニアライターのニコラスは、来年もリディア・コー世代の3選手が間違いなく活躍すると予想する。
「リディアは、100年に1人といっていいほどの逸材です。ゲームマネジメント、メンタル、ショット、パットなど総合力が抜群。3選手の中でも一番安定感があります。メンタルの強さは生まれもった才能でしょう。悪いショットを打とうが、良いショットを打とうが、その直後にすぐ気持ちを切り替えて次のプレーができます。ドライバーの平均飛距離は247.1ヤードとツアーの中では飛ばないほうですが、今まで安定して結果を残しているので、飛距離を伸ばすために無理やりスイング改造する必要はないですね」
また、「アリヤは、3選手の中で一番伸び代が大きいです。今年はタイ人ゴルファーとして史上初のメジャーを制し、計5勝しました。一気にファンやメディアから注目を浴びたことで、どう対応すべきか学ぶ1年だったと思います。肩の負傷が治り、試合によっては自信をもってドライバーを使うようになってきました(LPGAボルビック選手権はドライバー無しで優勝)リオ五輪のときにヒザ痛で途中棄権した苦い経験を踏まえ、オフは初めてトレーナーを雇いトレーニングするそうです。パットはうまいですし、試してることが安定してきたら、今までの女子ゴルフを根底から覆す、すごい選手に化ける可能性があります」とニコラス。
「ブルックは、アグレッシブでオールラウンドプレーヤーです。唯一弱点を挙げるなら、ドライバーの精度がちょっと低いことですね。ティショットが安定すればさらに期待できます。元シメトラツアー(米女子の下部ツアー)のゴルファーで長姉のブリタニーがキャディを務めていることは大きいですね。誰よりもブルックのゴルフを理解し、ブルックのことを考えてくれるでしょう。ゴルフ場の外でも気の置けないブリタニーと一緒に過ごすことで、リラックスし、楽しく転戦できています。ブルックは、今年が初の米ツアーフル参戦となり、出場試合数とラウンド数の両方で1位になるくらいゴルフをしまくっていました。経験値を上げることを重視したのでしょうが、今後は体力面を考慮し、メジャー制覇を念頭に置いたスケジュールを組んだほうが良いのではと思います」
「同世代のライバルがいることで相乗効果となり、ますますハイレベルな争いになっていることは、米女子ゴルフツアーにとってプラスです」という。来季もこの3人を中心にする米女子ツアーから目が離せない。

▲KPMG女子PGA選手権のプレーオフで対戦したリディア・コー(右)とブルック・ヘンダーソン(左から2人目)。ブルックが優勝し、メジャー初制覇

▲フェアウェイを歩くブルック・ヘンダーソン(右)とキャディで姉のブリタニー・ヘンダーソン(左)
南しずか みなみ・しずか
1979年生まれ。2009年より米女子ゴルフツアーを取材。ゴルフ雑誌や『Number』『Sports Illustrated』など、スポーツ誌に写真を提供。ニューヨーク在住。東京都出身。
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