ハッピーニューイヤー。2015年もゴルフを目いっぱい楽しんでいきましょう!
この一年、日本のゴルフ界についていろいろ吠えてきましたが、残念ながら最後にもうひと吠えしなければならなくなってしまいました。
松山英樹が「ダンロップフェニックス」に優勝したことで、14年シーズン開幕前に新たに決めたばかりの「複数年シード権、海外シード権をもつ選手に対し5試合の出場義務」規定を撤回。それを0にするという珍事が起きたからね。
たとえばサッカー界は日本代表をはじめとする多くのトップレベルの選手が海外チームに移籍し、活躍している。選手もあとに続こうと、日本サッカーのレベルアップにもつながっている。野球の場合は、フリーエージェントやポスティングを使い、ダルビッシュやマー君などスター選手が海外に移籍。もちろん、日本から出て行ってほしくない選手だが、代わりにビッグな移籍金を得ることで、球団はうるおうことができる。
でも、ゴルフには移籍する、という概念はない。だから、なんらかの条件をつけていい選手が自国ツアーから出て行かないようにするしかない。それは当たり前のことで、たとえば日本と同じように、米ツアーに多くの選手が流出した欧州ツアーでは13試合という出場義務を課した。当初は問題視されたが、ツアーの会長と選手たちの念入りな話し合いにより、高額賞金のフォールシリーズをつくるなど、改良を重ね、人気の回復に成功している。世界ナンバー1の米ツアーは、全員に試合中のパソコン、電話、クルマの支給、優勝者には生涯のツアーカード、引退後の年金制度などの待遇がある。潤沢な資金があれば、選手を引き留めることはできるわけだ。
しかし日本ツアーを司る、日本ゴルフツアー機構には選手を抱えるだけの潤沢な資金源がない。入場者収入をはじめ、放映権などもグレーなままだ。選手を引き留めるだけの魅力がツアーにないのも問題だ。
しかし今回のコラムでいいたいことは、決めたことは最後まで守ってほしいということ。そもそも松山は、米ツアーに専念しようと5試合の出場義務をあきらめ、日本ツアーのシード権を断念していた。この決断は正しいと思う。日本ツアーを軽んじているわけではない。彼のやるべきことは、プレーで観客を魅せること。そのためには米ツアーで必死に戦うことだとわかっているから。それに、松山にはシード権はなくてもアダム・スコットやバッバ・ワトソンのように招待選手になる価値がすでにある。
それなのに、あせったツアーはプロではなくスポンサーを優先。「松山が出なければスポンサーにならない」という企業を怖がり、当初の規定をいとも簡単にとりさげてしまった。シーズン末になってからのドタバタ劇。いまいる選手たちからも疑問視され、他国ツアーに流出、なんてことにならないことを願うばかりである。
JGTOには選手を抱えられる資金がない。でもせめて、自分たちで決めたルールを守り通すプライドをもってほしい
出場義務試合数規則について
複数年のシード権があっても「出場義務試合数」に達しなければ翌年のシード権は保障できない、というルールは世界各ツアーにある。いままでそのルールがなかった日本は2014年3月に「日本国内で開催される5競技以上のツアートーナメント」と設定した。しかし、わずか2試合の出場で優勝した松山英樹に、来季の出場権が与えられた。
タケ小山
本名=小山武明(こやま・たけあき)――1964年生まれ。プロゴルファー、ゴルフ解説者。テレビ「サンデーモーニング」(TBS)ほかラジオやコラムニストとしても活躍。東京都出身。
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