イラスト=マスリラ
ハローエブリバディ!秋のシーズン到来。この季節は景観もサイコー、ワクワクしますね。
景観といえば、最近、コースを改造してやさしくしたり1グリーン化する傾向が顕著ですが、私は声を大にしていいたいのです。
「そのコースの本来ある姿を、カンタンに変えていいのか?」
80年代、欧米著名デザイナーのコースがバブル景気で続々誕生したが、20年、30年を経て会員権補償金(償還)が始まると、お金は消えているから払えない。でもメンバーはそのまま。仕方がないから一度倒産させ、コースマネジメント会社に買収される。新オーナーは儲けたいからコースをやさしくしてプレー時間を短縮し、ラウンド数を増やそうとする。バンカーやハザードを埋め、じゃまな木を切り、フェアウェイを横切るカート道をつくる…。デザイナーや創設者が考えたコース本来のコンセプトや景観は無視である。
一方では、集客を期待して積極的にトーナメントを招致し、改造を加えるコースもある。とくに名門と呼ばれるコースはこっち。グローバルデザイン化をうたい、2グリーンを1グリーン化するコースは後を絶たない。
オーマイガッ。なぜに先人の素晴らしい設計を継承せずに平気でコースの命であるグリーンを変えてしまうのか…。
そもそも日本、とくに東北以南、九州以北は暖地型のコウライしか育たない気候で、でも冬になると枯れてしまうからと、試行錯誤して寒冷地型のベントのサブグリーンをつくった。そうやって1年中うまく回していたんだ。ところがいつのころからか、間違った見識者が「世界のスタンダードはベントの1グリーン」という考え方を広め、欧米コンプレックスの日本人は単純に影響され、1グリーン化を歓迎してしまった。
はたして2グリーンのどこが悪いのか?かのセントアンドリュースには2ホールで共有するダブルグリーンが7つもあるが、それを「世界基準だから」と各ホール1グリーンに改造しようなんてことにはならない。ゴルフ場がその地の文化遺産でありプライドでもあり、それを私利私欲のために改造するなんてありえないんだ。
マネーの都合でコースをいじりまくっていると、数年後の日本のコースは景観も個性も魅力も損なってしまわないだろうか。海外にはない、日本の土壌に合った2グリーンは守るべき日本の遺産だということに、早く気づいてほしいんですが…。
グローバルスタンダードを追いかけてばかりでいいのか?海外にはない、日本のゴルフ文化である2グリーンは遺産です
日本ならではの2グリーン
高温多湿で芝の育成が困難な日本。コウライがメイン、ベントがサブの2グリーン元年は1935年の霞ヶ関CC西Cからといわれる。当時ベントの1グリーンは不可能といわれていたが、管理技術、品種改良が発展し、現在はベントの1グリーンが叶うようになった。
タケ小山
本名=小山武明(こやま・たけあき)――1964年生まれ。プロゴルファー、ゴルフ解説者。テレビ「サンデーモーニング」(TBS)ほかラジオやコラムニストとしても活躍。東京都出身。
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