世界的なレジェンドゴルファー・青木功。そのゴルフの真髄に迫るとともに、多くのファンやライバルたちをもうならせたショートゲームのテクニックを教わった。
構成=鈴木康介/写真=前田俊二、相田克己/協力=茂原カントリー倶楽部
すべてのショットが一期一会だからゴルフは飽きないんだ
――青木プロは今年で73歳になられますが、本当にお元気ですね。
青木 普通のサラリーマンならとっくに退職している歳だよね。社会的にも一定の地位を得て、仕事も一段落。言い方は悪いけど「上がった」状態なのかな。でも俺はプロゴルファーだから、この歳でもまだプレーを続けなければならないし、続けたいとも思う。いまでも日々上達し続けているという感覚はあるんだ。もちろん体力的には衰えているから、昔と同じようなプレーはできないし、スコアも出ない。でも、まだゴルファーとして完成していると思ったことはないよ。
――青木プロほどの方でもまだ未完成ということですか。いつの日か、完成はあるのでしょうか?
青木 ないね。完成は完全に成し得ると書く。成し得たと思ってしまったら成長は終わりだよ。完成したと思わないから、73歳でも成長できるんだ。それにゴルフは、一度として同じ状況から球を打つことのないスポーツ。だからいつも新鮮で、いつも新しい。ゴルフってのは、歳をとらないんだ。
――青木プロは、すべてのショットを覚えているという話を聞いたことがあります。
青木 そりゃあ俺はそれが仕事だから、覚えているよ。
――すごい!本当だったんですね。そのなかから一番印象深い1打を教えていただけますか?
青木 優勝を決めたショット、パットの全部が印象深いけど、あえて言うなら、80年のジュンクラシック、最終日の18番パー4の全4打が人生最高のショット、パットかもしれない。
――セベ・バレステロスに競り勝って優勝した試合ですね。
青木 18番を迎えて、俺は2打のリード。お互いティショットはいいところに行っていたけれど、200ヤードを超える池越えが残っていた。それでもセベは2オンさせてバーディを獲ってくるなって思った。でも俺はあえて2打目を7番アイアンで刻み、得意な105ヤードを残したんだ。それをSWで5メートルにつけ、1パットのパーで逃げ切った。このパットは、ギャラリーのざわつきが収まるのを待てるくらい冷静だったよ。マネジメントも完ぺき。4打全部が会心の、忘れられないショットだったな。
80年のジュンクラシック。最終日の18番の全4打が俺の人生最高のショット
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