百獣の王こと武井壮が、手にしたいと願う大きな目標のひとつがプロゴルファーになること。今月は、今季のプロテストに見事に合格したプロコーチ改め、プロゴルファー中井学との対談をお贈りします。
ヘアメイク=奥野誠/協力=日神グループ 平川カントリークラブ
中井学 なかい・がく
1972年生まれ。当サイトレッスン企画でおなじみの教え上手。今季のプロテストを一番下のプレ予選から受け、最終テストまで上り詰めると2位タイで合格。年齢、経歴とも異例といわれながらの挑戦と合格が大きな話題となった。
武井壮 たけい・そう
1973年生まれ。百獣の王として、メディアにひっぱりダコの超人気タレント。8月にフランス・リヨンで行われた世界マスターズ陸上の4×100メートルリレーのM40クラス(40~44歳クラス)で悲願の金メダルを獲得。陸上世界一からゴルフ世界一を目指す。
武井 トーナメントプレーヤー中井学の誕生(※1)。おめでとうございます!
※1 日本プロゴルフ協会(PGA)が認定しているプロゴルファー資格には「トーナメントプレーヤー(TP)」と「ティーチングプロ(TCP)」の2種類がある。「トーナメントプレイヤー」とは、ゴルフ技能にとくに優れトーナメントに出場するだけの技能、及び知識を有した者。「ティーチングプロ」とは、ゴルフの指導技能に優れ、広範にわたるゴルフ知識及びPGA指導要領を取得した者に付与されるもの。中井はプロテスト合格により「トーナメントプレイヤー(TP)」の資格を手に入れた。
中井 ありがとうございます!
武井 ゴルフ界では大きな話題となり、いろいろなメディアから取材が殺到しているようですが、改めてなぜ今になってプロテストを受けたのかを聞かせてもらえますか?
中井 いくつかの理由がありますが、そのひとつは武井さんの影響ですね。
武井 ボク?学さんには、いろいろと失礼なことをいった記憶もありますけど(笑)。なんでしょうか?
中井 それを説明する前に、武井さんはなぜ世界マスターズ陸上に出場(※2)することにしたんですか?
※2 「世界マスターズ陸上競技選手権大会」。35歳以上を対象とした、隔年開催の陸上競技大会。今年8月で21回目を迎えたが、武井が出場するまでは日本での認知度はかなり低かった。武井は13年のブラジル大会から参加。100メートル走と200メートル走に出場し、200メートルでは銅メダルを獲得した
武井 リレーのこと?そうですね。恩返しというかお礼がしたかったからですね。今のボクは、3年前と比べたらまったくの別人。ありがたいことに、たくさんの人がボクを見て楽しんでくれるようになりました。それって芸能界でもスポーツ界でもボクがずっと求めていた価値なんですよ。ボクはその価値をいただいたお礼を、お世話になったみなさんにしたいな、と思ったんです。
中井 その価値を手にしたのは武井さんの努力や才能でしょうが、多くの同業者やスタッフ、ファンへのお礼なんですね。
武井 はい。今までろくに働かない時期もあったり好き勝手なことばかりやってきた自分をこんなふうにしてくれたわけですから、現状に甘んじてボクがのんびりテレビに出ているだけでは申し訳ないだろうと。だとしたら、今ボクにできる特技を使って夢を叶えられないか。マスターズだけど陸上の世界一に、タレントとしてのお仕事もガンバりながらなれることを証明する。1日24時間の中で、毎日1時間の短い練習やトレーニングだけで、ビッグな夢が叶いますよ、というメッセージを送りたかったんです。
中井 そして、見事に金メダルを獲得し、世界チャンピオンになった。なるほど…。ボクのプロテスト受験にも共通する部分がたくさんありますね。ボクも愛するゴルフに恩返しがしたかったんですよ。これまでゴルフに生かされ、ゴルフに育てられてきましたから。ところが数カ月前のボクには、武井さんのような価値がまったくというほどありませんでした。
武井 そうでしょうね。中井学という人間は、今のステージじゃないだろうし、本人も満足してないだろうな、と思っていましたから(笑)
中井 ゴルフ界の衰退を危惧し、改革したいと思っているのに悲しいくらい知名度と発言力がないんです。現在や未来のゴルファー、プロ・アマを問わずゴルフを心から楽しんでもらえるようになってほしいのに、どんなにいいアイデアがあったとしても、プロゴルファーではなくプロコーチといわれるファジーなフワッとした感じの立場のボクでは、何をいっても外野からのヤジみたいなもので中央の人たちには聞き入れてもらえない。ですから、話を聞いてもらえるポジションまで行かなきゃ、というのが最初の動機です。
武井 昔のボクと同じですね。能力があってすごい成績をあげても、その業界から一歩外に出ると誰も見ても聞いてもいなくて、ずっと不満や寂しさを感じていました。
中井 コーチをしても海外とは違い、なかなか選手と対等には見られない。日本の師弟関係は、師は弟(てい)よりも上手でなくてはいけない。そうでないと、うまくいかなかったときに「オレより下手だから」で終わってしまう。
武井 格下扱いされてしまうんですよね。それを今回プロゴルファーになることで、鍵を手に入れた。
中井 そうです。これですべてがクリアになったわけではないですが、少なくとも扉を開けることはできるんじゃないかと。
武井 40歳をすぎてからやっとスタートラインに立ったというところも、ボクと同じ。確かに共通する点は多々ありますね。
中井 武井さんに初めてお会いしたころ(※3)から似ている部分があるな、と感じてはいたんですよ。そのときも、結構長い時間立ち話をしたんですが、お互い業界の閉塞感に潰されそうな感覚をもっていて、目指すものは違うけど「なんとかしたいですね」って話をしました。
※3 武井と中井のはじめましては、今から約10年前。東京都・豊洲のインドア練習場のオープン時にたまたま出会ったのが最初。当時は二人ともまったく無名な男だった
武井 学さんのことは雑誌やネットで拝見していましたが、去年、再会したのは8年ぶり。ボクのスイングがボロボロになっちゃって、担当編集者さんに「誰か答えを教えてくる人いないですか」って聞いたときに、練習場に呼んでくれたのが学さんでした。
中井 連絡があったのが午前0時で、着いたのが1時くらいでした(笑)
武井 そんな時間にわざわざ来てもらってホントに申し訳なかったんですが、ちょっと話してみて「あっ、この人ゴルフのことわかってんだな」というのが、率直な感想でした。なんか上からですみません(笑)
中井 いいんですよ。ボクもスイングを見て話してみたい人だったので、喜んで行きましたから。
武井 学さんのアドバイスがボクに響いたのは、例えていうと免疫力や治癒力を高める方法を教えてくれたから。それまでに話したコーチは悪いところにお薬を与えて、悪さを抑えるようなものが多かった。「今はこの症状だから、これを投薬しなさい」って具合に。でも、それよりも免疫力や治癒力を高めておけば、病気自体にかかりにくくなるし、かかって発病してひどくなる前に自分で治せる。ボクはそういう方法が知りたかったんですよ。
中井 免疫力を高めれば投薬なんていらないんですよ。いちいち指導を受けるんじゃなくて、自分がどうすれば治るのかを理解してもらうのが一番。薬なしなら副作用も少ないですし。武井さんのように練習の回数も時間も思うようにとれないけど修正能力が抜群に高い人は、下手な投薬をすると激しい副作用をとくに起こしやすいですからね。
武井 練習場での会話も盛り上がって長かったですが、そのあと練習場の近くのファミレスに行ってからがもっと長かったですよね(笑)
中井 あれは大きな出来事でしたね。「ファミレス事変(※4)」です(笑)。武井さんに影響された、というのはまさにあのときで、自分なりにアクションを起こさなければいけないな、と思うきっかけであったのは間違いありません。
※4 練習後のファミレスでの会話は、お互いの近況報告から人生相談に発展。深夜2時から早朝5時まで続いたが、そのときの会話が中井の大きな転機となった
武井 あのときの学さんって、3年前のボクを見ているようだったんですよ。正しいことをいうし、その道でちゃんとした評価を得られるものをもっているのに、その業界から出た広い世界で見たら、誰もこの人のことを知らないなって。評価される場所にいない、評価してくれる人が周りにいないから、表情も沈んでいたし、目の輝きもなかった。ボクはそういうのを自分が経験しているだけに敏感に感じとれるから、学さんにそのままポーンとぶつけてみちゃいました。「学さんって…
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