連載コラム

石川勝美-ゴルフ道なき奥の細道

報道のあり方について

2012/11/20 21:00

  • LINE
報道のあり方について



 遼の来季の用具契約をめぐって、スポーツ紙からの取材があった。

 新聞側も周辺を取材したらしく、的はずれな質問ではない。起こった事実だけを報じることから一歩前に出た報道は、内容が各社バラバラになることがある。この種の報道に正確性は必要ないとわたしは思う。ゴルフ界としては、大歓迎といえよう。

 プロ野球はドラフト会議、日本シリーズと終了すると、その後、FAが話題となり、年が変わる前には契約更改が報じられる。それぞれのケースで契約金何億円、年棒いくらと推定の金額が世間をにぎわす。これを見てプロ野球選手になりたいと思う子どもも、少なくないだろう。

 日本では扱いが小さかったが、ローリー・マキロイの用具契約でN社が10年200億円という数字でオファーを出したらしい。タイガー・ウッズやマキロイのクラスになると、高額年棒で知られる大リーガーを超える契約金が発生する。その報道を見て、欧米の子どもたが、一部には成り立つ。試合の獲得賞金だけでは、シード選手といえども下位のほうでは生活すら苦しい。しかし、たいていのシード選手は用具などの契約金があるので、いいクルマに乗って、いいホテルに泊まる。

 ジュニアゴルフが盛んになってきたとはいえ、子どもにゴルフを続けさせることは、金銭面でとても大変である。しかし、ほんのひと握りとはいえ、大成すれば億単位の収入を得ることができる。そう報道してもらえば、プロゴルフの地位も高くなる。

JGTO(日本ゴルフツアー機構)

 JGTOは、選手のデータを管理している。だからそれをもっと発信してほしい。

 プロ野球では2000本安打、300本塁打など、選手の生涯記録を節目で話題にする。ゴルフの場合は、通算何勝くらいだろうか。

 たとえば遼。年間で300~400個のバーディを獲る。節目の1000個目のバーディは、いつだったのだろう?

 わたしにもわからない。テレビ放映でそんなデータを出せばおもしろい。

 いまや男女とも国内ツアーは韓国勢が強い。だが、はたして日本のゴルフ中継が韓国で売られているのだろうか?

 男子の場合、トーナメントを主催するキヤノン、カシオ、パナソニックなど大手企業は、市場をアジアに見ているはずだ。トーナメント効果が国内の宣伝だけに止まっていては、その魅力は薄い。CS放送などを使ってアジアに売っていけば、スポンサーは喜ぶと思う。しかしながら、JGTOが放映権をもっていないのだ。

 わたしは素人で、絵空事を書いているにすぎないし、真剣に取り組んでいる関係者もいることだろう。このほかにもコース設定やツアー日程、下部のチャレンジツアーのあり方など、課題は多いと思う。

 停滞は衰退を意味する。失敗を恐れずに変化しなければ、プロゴルフ界の先はない。

追記

 日本は、お金に対する教育が不十分だと思う。

 方程式ができなくて自殺する人はいない。「契約」という漢字が書けなくて自殺する人はいない。アメリカの首都がわからなくて自殺に至った人はいない。

 しかし、お金で自殺する人は多い。お金で紛争が生じる。

 お金とは、人生の自由度だといえるのではないだろうか。最低の自由を維持するためには、どの程度のお金が必要なのか。もっと自由になるためにはどの程度なのか。教育が必要だ。お金には憎さもある代わりに、夢もある。

石川勝美
●いしかわ・かつみ──息子・遼のコーチ役として各地に帯同しながら、執筆、講演活動などを精力的にこなす。『石川家の子育て』など著書多数。ゴルフをはじめ読書、写真、釣り、旅行、競馬、家庭菜園など多彩な趣味をもつ。1956年生まれ。



人気コラム

※直近24時間でアクセス数が多かった記事順です。

テーマ別レッスン

あなたのゴルフのお悩みを一発解決!

注目キーワード
もっとみる