連載コラム

石川勝美-ゴルフ道なき奥の細道

旅行をやめて「旅」に

2013/8/30 21:00

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旅行をやめて「旅」に

 リオ(ブラジル)五輪まであと3年。レスリングが候補種目に残ったというのが話題になった。

 スポーツなら五輪である。五輪でメダルを獲得することが、そのスポーツの発展に寄与する。そして、競技人口が少ないマイナースポーツほど、五輪の効果は高い。野球やサッカー、ゴルフ、テニスが五輪種目からはずれても、即ファンの減少とはならない。それは、ワールドベースボールクラシック、ワールドカップ、マスターズ、ウインブルドンと世界的な興業があるから。そう、世界的な視点から見て、ファンの減少は生じないということ。

 しかし、リオから再開されることとなったゴルフにおいては、日本では逆の現象が案じられる。日本人選手がもっともメダルに遠い競技のひとつとして、ゴルフ(男子)が挙げられるのではないだろうか。

 丸山茂樹以来、世界に伍して戦えた選手はいない、といっていいだろう。リオの五輪で日本人選手全員が予選落ちすることが考えられる。そうすると、いままでゴルフを見なかった人だけでなく、長年ゴルフを支えてくれた大切なファンにも見限られてしまうのではないか。

 こういう事態に陥った原因は、ゴルフ界の鎖国政策である。試合数が減って1年の半分が休みになっているにもかかわらず、海外に出ていく選手は数える程度。それは、国内の賞金で食べていけるから?

 海外遠征にはリスクがある。しかし、スポーツマンなら世界に出て一流と戦わなければおかしい。まして、プロ選手なら。

 ゴルフにはほかの多くのスポーツと違って、「コース」というものがある。オーガスタナショナルが得意な選手もいれば、セントアンドリュースが得意だという選手もいるだろう。日本のゴルフコースは単調で、とくにウォーターハザードが少ない。そんななかで試合をしても、世界では通用しないのではないか。コースを変えることは、大変な労力になるのでそう簡単ではない。ならば、選手が出かけていくしかない。自国に立派なツアーがあってその賞金も高額である。十分な環境があるのだから、あとは選手の考え方次第。

 いま世界で通用する可能性がもっとも高いのは、松山英樹だという大勢の意見にわたしも異論はない。つるやオープンで優勝するなり、「早くアメリカに行きたい」と明言した。優勝したから出た言葉ではなく、以前からメジャーを意識した発言が多かったから、本心だろう。彼には国内で勝てればいいなんて考えは、みじんもなかったはずだ。

 ベテラン勢はさておき、若い選手のなかからもうひとり、ふたり、そういう選手が出てきてほしい。そして、鎖国的なルールはやめて、選手が海外に出やすい、日本に戻りやすい環境をツアーは整えるべきである(これについてはいろいろ指摘したいところであるが、今回は省略する)。

 もし、松山が1年で日本を出てしまったら、来年のツアーはどうなる? スポンサーはつくのか? ファンは見に来てくれるのか?

 ツアー存続のためにファンサービスが重要だということは、これまでにも書いてきた。それ以上に重要なのが、選手が世界と伍して戦うことである。

 個人的には、遼を応援している。そして、2年前の住友VISA太平洋マスターズで松山が勝ったときから、わたしは彼のメジャー級のゴルフに期待している。いま、遼は必死に自分のゴルフをつくっている。

 遼の父親として、ふたりを見ていて、じつにすがすがしい。誇りにさえ思う。







石川勝美
いしかわ・かつみ──息子・遼のコーチ役として各地に帯同しながら、執筆、講演活動などを精力的にこなす。『石川家の子育て』など著書多数。ゴルフをはじめ読書、写真、釣り、旅行、競馬、家庭菜園など多彩な趣味をもつ。1956年生まれ。

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