連載コラム

石川勝美-ゴルフ道なき奥の細道

危機管理能力

2014/4/24 21:00

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危機管理能力

 政治における、企業経営における、という具合に「危機管理」という言葉が使われる。危機管理は、日常的に、当たり前のように、だれもが理解できる言葉として世の中に認識されたと思われているようだが、はたしてそうだろうか?

 プロゴルファーがOBを打ったり、池に入れたり、スリーパットすることが、危機管理能力に劣っているとはいえない。想定外の出来事を想定すること、が危機管理である。さいたるものは生命保険だろうか。

 たとえば、プロゴルファー石川遼の危機管理はどうあるべきか?腰痛が悪化してプロゴルファーを続けられないケースが一番だろう。その次は、賞金シードを落として試合に出場できなくなったらどうするべきか?そうなったときに「想定外だった」では済まされない。

 銀行員だったわたしなら、銀行が倒産して収入が途絶えたらどうするか?病気で長期入院したらどうするか?家内が死んだら子どもの面倒はだれが見る?もし、息子が他人を傷つけたらどうする?

 危機管理とは、そういうことなのだろう。しかし、よいほうの危機管理もある。危機という言葉がふさわしいかどうかはともかく、いちばんよい例が、遼が15歳のアマチュアでプロツアーに優勝したことだろう。もちろん幸運に恵まれてのことであるが、やはりそういうことも想定してわたしは生きてきた。だから、わたしはいまでも(あり得ないことであるが)遼がマスターズに優勝したら?という考えはもっているつもりだ。

 世の中、自分の思うとおりにまわらないとみんなわかっている。だが、「まさか?」という事態にどれほどの人が備えているだろうか?ある一定の事象に対して可能性がどれほど低くても、ゼロではないかぎりはその事象に備えるのが危機管理だと考える。将来を想定して生きている人間は、危機管理をしているのだと思う。

 動物は、いつ天敵に襲われるか知れないというなかで生きている。われわれもそうあるべきだが、なにかが起きると自分の責任を他人に転嫁する傾向にあるのではないだろうか。


日本ツアー出場予定

 遼が今年の日本ツアーに出場する予定を書いてみたい。

 5月の中日クラウンズを中心に春の出場試合を考えている。9月のANAオープンを中心に秋の出場試合を考えている。そのあと10月には米ツアーの来季の試合となるシュライナーズホスピタルズへの出場を考えている。

 しかし、すべては予定であって、それまでになにがあるかわらからない。もっと多くの日本の試合に出場したいけれど、予定どおりうまくいくかもしれないし、1試合も出場できないかもしれない。

 1試合も出られなければ、日本ツアーのシード権を獲るための出場義務試合数5に満たない。そうなったときには、日本ツアーの出場権は剥奪されるのかもしれない。このような環境に自分がいると認識することが、危機管理なのだと思う。

 宝くじが当たったら、というのも危機管理だと思うし、自宅が火事になったらというのもそうだろう。想定外を想定する生き方を一考いただきたい。

石川勝美
●いしかわ・かつみ──プロゴルファー石川遼の父。ゴルフ界発展のためのさまざまな提言を発信する。ゴルフをはじめ読書、写真、釣り、旅、競馬、家庭菜園など趣味は多彩。著書に『石川家の子育て』など。1956年生まれ。

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