連載コラム

石川勝美-ゴルフ道なき奥の細道

ゴルフと子ども

2015/6/30 22:00

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マスターズ

 今年のマスターズを見て、松山英樹はいつかメジャータイトルを獲る、と思った人は多いだろう。わたしも、もちろん同じ思いである。

 さらにもう少し幅広く考えて、日本人選手がメジャーに手が届く、と考えるわけである。松山クラスの選手が3人いれば、必ず勝てる。5人いれば、毎年だれかが優勝争いをする。そんな時代は来るのだろうか?


ゆとり教育

 萩野公介(水泳)、羽生結弦(フィギュアスケート)、内村航平(体操)、田中将大(野球)、桐生祥秀(陸上)――。高校あがりの若者が一線級に混ざって日本のトップの座にあり、世界を狙える位置にいる。10年前までは考えられなかった。なぜこうも、日本人選手が伸びたのか?世界第2位(現在は3位)の経済力のなかで育った子どもである。また、貧富格差が少なく、子ども全員にそのチャンスが与えられている幸福な国であるのも事実で、その影響もあるのだろう。

 しかし、一番の要因は、ゆとり教育にあったとわたしは思う。小学校、中学校の土曜、日曜を休みにして、国が関与しない時間を子どもに与えた。遼は土日は朝から晩まで球を打っていた。松山もきっとそうだっただろう。

 バブル経済が崩壊して景気は下降していたが、ゴルフの場合はかえってプレー代が安くなり、またゴルフ界はジュニア育成に傾いていた。当時から、KGA(関東ゴルフ連盟)は夏休み、春休みに名門コースを使って格安でジュニアスクールを開催している。そこでは技術指導もあるが、マナーについて強く教えているようだ。JGA(日本ゴルフ協会)には、よい指導者がたくさんいる。子どもにとってすばらしいこうした環境は、ほかのスポーツに類をみないだろう。まあお世辞をいえば、本誌のようなプレーヤーに必要な情報も、ゴルフにはたくさんある。

 こうしたことがゆとり教育と相乗して、いまの若者は伸び伸びとスポーツをしてきた。ゆとり教育が廃止となったわけだが、残念である。わたしは金、土、日を自由登校として、その3日間に子どもに好きなことをやらせるべきだと考えていたので、なおさら残念である。

 学校は勉強だけでなく、集団生活を学ぶ場でもあり、学校に行かない日は少ないほうがいい、という意見もあるが、スポーツなどを通じて友情が深まるケースのほうが、子どもの場合は多いものだ。


ゴルフの力

 近ごろ、若者の凄惨な事件が目につく。育った境遇に問題が多いのだろうが、そのだれもが友だちのいない子どものようだ。

 子どもは家族の宝であり、少子化が進んで来ると、それは社会の宝といわれるようになる。勉強ができないことから学校に行かなくなり、友だちもいなくなる。そんな子がゴルフをはじめ、大人の仲間に入ってプレーをしながら成長し、立派に職に就いた例をわたしは何人も知っている。

 こうしたことができるのが、ゴルフのすばらしいところである。ゴルフをはじめて日本ジュニアゴルフ選手権を目指すのはよいが、この試合は少しレベルが高すぎるので、はじめたばかりの子どもを集めるような大会があってもいいかもしれない。もっと多くの子どもに参加してほしい。














石川勝美 いしかわ・かつみ
プロゴルファー石川遼の父。ゴルフ界発展のためのさまざまな提言を発信する。ゴルフをはじめ読書、写真、釣り、旅、競馬、家庭菜園など趣味は多彩。著書に『石川家の子育て』など。1956年生まれ。

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