連載コラム

石川勝美-ゴルフ道なき奥の細道

燈台守

2015/7/31 22:00

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最終回に寄せて

 2008年にはじまった「ゴルフ 道なき奥の細道」が7年間も続いたことは、読んでくださった方がいたからであり、まずはお礼を申し上げたい。今月が最終回となるが、最後は読者のためではなく、自分のために書くことをご容赦いただきたい。

 わたしの人生もあがり3ホールを残すところとなった。

 人生を3つに分けてみる。20年、30(40)年、20年と分けると、わたしはいま最後の20年を迎えようとしている。

 初めの20年で、自分がなにをするかを決める。もしくは、どういう形で生きるかを決める(いや、決まる、といったほうが正確か?)。次の30(40)年で生きる。そして、最後の20年で後始末をする。

 これは大ざっぱに分けたわけで、重なる部分は多いし、生き方が変化することもある。それでも最後の20年の後始末は共通するところだ。


人生を生きる

 毎日を生きることでアップアップ、そんな悠長な考え方はできないという人もいるだろう。わたしだって、このように考えはじめたのは最近(10年くらい前)だ。なににアップアップしているのだろうか?地位か?名誉か?金か?いずれも大切なものであるが、それは最後の20年でどう使うかにかかっている。

 サラリーマンであれば会社を辞めた瞬間に消滅してしまう地位や名誉など、なんの役にも立たない。貯め込んだ金の使い方を知らない人も多い。

 わたしのいう人生が万人に共通するとはいわないし、わたしの友人でも住宅ローンをかかえて定年後、再雇用という形で会社に残る人間も多い。実生活としてこうあるべきだ、というのではなく、考え方をいっているわけだ。

 最後の20年のために準備して、本当の人生を最後の20年で生きてみたい。


後始末

 わが家のなかではなにもやらないわたしだが、わたしにしかできないこともけっこう多い。ジュニアゴルフチームの件、生き物の世話、畑の管理、本の整理、別荘の管理など。これらを少しずつ整理しておくことは大切だ。

 一番下の息子が今年高校に入学した。もう働ける年齢だ。遼は高校生から働いていた。これでわたしたち夫婦も、ふたりでゴルフに行けるようになるだろう。この夏は旅行ができるかもしれない。25年前に行った新婚旅行(北海道)をもう一度、と約束したが、ようやく実行できるかもしれない。小型船舶の免許を取ったのだから、そろそろ海に出てみたい。

 やり残したこともある。農業をやってみたかった。居酒屋をやってみたかった。馬主(一口馬主)になってみたかった。ほかにもいくつかできそうでできないことが残った。

 けれど、もうやらない。人生を縮めようとしているいま、もう拡大はできない。


バブル経済

 いまのアベノミクスバブルは、あと1、2年で終わる。そして、不景気がはじまり、また20年後にバブルになる。それを繰り返すのが資本主義の宿命だろう。年金バブルの収縮はすでにはじまっている。

 男子プロゴルフのバブルは完全にはじけた。バブルとは、実体の伴わない熱狂を意味する。女子プロゴルフのバブルは、いまが絶頂期といっていい。水泳や体操競技がプロ化すれば、熱狂の波はそちらに向かうだろう。経済のバブルもスポーツのバブルも他人事ではあるが、時代を読むことはそれで楽しいところもある。


よろこびも悲しみも幾歳月

 子どもを教育するのは親である。いまの学校の先生では、それはできない。時に厳しく、時にあたたかく指導していきたい。そして、少しずつ離れていくことになる。

 「よろこびも――」。この燈台守が親であり、唄のなかの沖行く船が子どもだ。ピンチになっても手出しはできない。ただ光を発して方向を示す。その光を本人がどうとらえて行動するか。教育とは生きる力を養うことだ。他人に頼らず、自立することであって、勉強ができるかどうかはほんの小さな違いに過ぎない。

 これでおしまい。

石川勝美



追伸

おいら岬の燈台守は 妻とふたりで沖行く船の無事を祈って灯をかざす 灯をかざす












石川勝美 いしかわ・かつみ
プロゴルファー石川遼の父。ゴルフ界発展のためのさまざまな提言を発信する。ゴルフをはじめ読書、写真、釣り、旅、競馬、家庭菜園など趣味は多彩。著書に『石川家の子育て』など。1956年生まれ。

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