写真=前田俊二/イラスト=北沢夕芸
ハローエブリバディ!メジャーにオリンピックと寝不足の日々が続きますが、ゴルフしてますか?
オリンピックといえば、松山英樹の辞退はちょっと残念でしたが、それより印象的だったのは、その松山に対して日本ツアーがそれまで課していた国内ツアー年間5試合の出場義務を解除したこと。
この出場義務試合。0だったところを14年度から5試合にしたばかり。これは、14年度から海外進出を宣言した松山やすでに海外進出している石川遼に、日本ツアーに出てほしいという背景があったわけだが、それは納得できる。トーナメントを主催するスポンサー側は対価としてかなりのお金を払うわけで、ビッグネームに出てもらいたいのは当然。なのに日本の賞金王を獲った男が、日本シリーズにも日本オープンにも出ないとなれば、スター不在の日本ツアーを活性化させるためにルールを変えることは、決して間違ってはいない。実際、米ツアーではタイガーが年間16試合しか出ない現状を変えるべく、13年、それまでの賞金ランキングからフェデックスカップというポイント制へと大きく改革。お金を集めてくる人(スポンサー)、お金をもらう人(ツアー)、お金をもらってファンにパフォーマンスを見せる人(プロ)というトライアングルが整った、すべてウィンウィンになれる興行モデルをつくり、大成功した。
だが今回の義務解除はどうか。ツアーが松山に「出なくてもいい」といってしまったため、トライアングルのバランスは完全にくずれ、スポンサーがルーザーになってしまった。青木会長は、試合数を増やしてツアーを改革するといってはいるが、はたしてなにを看板に営業活動をするのだろうか。
年間5試合義務をつくったのは外部出身の海老沢会長だったが、プロ出身の青木さんに変わったとたん、いとも簡単に選手寄りのルールに変えてしまったことにも、不安が残る。スポーツビジネスをするうえで選手と協会側にはある程度の壁が必要。壁を取っ払うことで松山を口説けることにはなったわけだが、そんなことをいわなくても、日本ツアーのメンバーとしての自負があるなら最低限の試合は出るはず。実際、石川は5試合の義務をはたしている。
ルールをつくったなら守らせればいい。選手を野放しにしすぎて、大切なものを失ってしまうことにならなければいいが…。
5試合と決めた出場義務試合を新会長になったとたんに撤回した。選手側に立った改革ばかりしているとスポンサーの“ウィン”がなくなってスポーツビジネスが崩壊してしまうのに
松山の出場義務試合を免除
JGTOは、6月27日の定例理事会で、13年の賞金王によるシード権(18年まで)をもつ松山に対して課せられている年間5試合の出場義務について免除することを決定。14年度分として松山から徴収した制裁金80万円を返金した。松山は、義務をはたせないとして15年からツアーメンバーの登録をしていなかった。
タケ小山
本名=小山武明(こやま・たけあき)/1964年生まれ。プロゴルファー、ゴルフ解説者。テレビ「サンデーモーニング」(TBS)ほかラジオやコラムニストとしても活躍。東京都出身。
この記事が気に入ったら
SNSでシェアしましょう!