連載コラム

海の向こうのタフガールズ
アリヤ・ジュタヌガーン

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ニュースだけじゃ伝わらない米女子ツアー選手たちの魅力を毎月、現地からレポートします!
文・写真=南しずか


アリヤ・ジュタヌガーン Ariya Jutanugar
1995年生まれ。16年の「ヨコハマタイヤLPGAクラシック」で、タイ勢として米女子ツアー初優勝。そして、圧倒的な飛距離を武器に「全英リコー女子オープン」でメジャー初優勝を果たした。プロゴルファーの姉・モリヤも米ツアーに参戦中。タイ出身。


故障という挫折を乗り越えて、覚醒したニュークイーン



 16年はアリヤ・ジュタヌガーンが大ブレークした年だった。タイ人初のメジャー制覇を含む5勝を挙げ、賞金女王と最優秀選手賞、年間ポイントレースをトリプル受賞したのである。

 衝撃的だったのはアリヤのクラブセッティングだ。ドライバーを使わない。それで「LPGAボルヴィック選手権」と「全英リコー女子」を制した。リディア・コをはじめとする世界中から集まった強豪たちを抑えての優勝である。

 ドライバーを使わないのは「コースが狭すぎるから」という。たしかに、彼女は3番ウッドで約270ヤード飛ばしたこともあるパワーヒッターなので説得力がある。だが、ドライバーを駆使したほうが試合で有利なのはいうまでもない。それでもドライバーを使わないのは、13年にゴルフ場で転倒し、肩を負傷したことに起因する。

 負傷は手術を要するほど重症で、数ヶ月間ゴルフをしなかった。ようやくケガから回復したが、米ツアーのルーキーだった15年は、まったく思うようなプレーができず、悪夢のような10戦連続予選落ちをしてしまう。「もうボールを打つのが怖かった」と、全米女子の月曜の練習日では6ホール回った時点で練習をやめてしまうほど、精神的に追い込まれていた。

 そこで打開策として、あえてドライバーを使わないでプレーすることに決めた。その結果、フェアウェイキープ率が向上。徐々に本来の力を発揮し始めて、試合でいい結果が出るようになった。同時に、宮里藍も実践する「ビジョン54」というメンタルトレーニングを取り入れて試合中のメンタルをコントロールすることも学び、16年の年間5勝につながったのだ。

 アリヤは負けるたびに経験から学び、そして覚醒した。

「17年はドライバーを使いますよ、時々ね」

 まだ21歳。どこまで強くなるのだろう。彼女がドライバーを使いこなせるようになったとき、女子ゴルフのゲームマネージメントを根本から覆すかもしれない。

▲16年賞金女王と最優秀選手賞、年間ポイントレースの3つを獲得して微笑むアリヤ




南しずか みなみ・しずか
1979年生まれ。2009年より米女子ゴルフツアーを取材。ゴルフ雑誌や『Number』『Sports Illustrated』など、スポーツ誌に写真を提供。ニューヨーク在住。東京都出身。

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