コンパクトなのにやさしく飛ばせる高機能アイアンが急増
最新アイアンを打って感じたのは、アイアンもドライバーに負けないくらい進化しているということです。よく、「アイアンはバックフェースのデザインが変わっただけで、機能的には変わらないよね」という人がいますが、そんなことはありません。ドライバーのようにヘッドを極端に大きくできない、シャフトを長くできないという制約があるなかで、メーカーはさまざまな工夫をして、特徴のあるモデルを出しています。
なかでも、ボクが注目したのが「T-MB」。マッスルバックのようなシャープな形状で、中空構造になっているのが特徴です。これまで中空アイアンといえば、ユーティリティのようなボテッとした形状で、飛びに特化したモデルがほとんどでした。しかし、「T-MB」は球筋や距離を打ち分けられる操作性の高さがあり、なおかつ中空アイアン特有のオフセンターヒットに対する強さや打感のやわらかさを備えています。また、中空アイアンは構造上、重心が高くなりやすいのですが、ソールにタングステンをつけることで低重心化を実現。見た目よりもはるかに打ちやすくなっています。
このほかにも、「iDナブラRS フォージド」や「MP-H5」のように、操作性が高くてオフセンターヒットに強い中空や、「J15DF」のようにフェースに飛び系の素材を使うことで、操作性と飛びを両立した中空も登場。設計技術と製造技術の進化で、操作性、やさしさ、飛びという相反する機能を備えた高機能アイアンが増えています。
また、「RSiシリーズ」や「グローレF」は、フェースやソールの溝がオフセンターヒットに対する強さを実現。360度ポケットキャビティの「J15」や、360度カップフェースの「XR」は、これまでアイアンに応用するのはむずかしいといわれていた技術で、飛びとやさしさを追求している進化系アイアンです。
マッスルバックはプレースタイルによって選択肢が広がった
コンパクトな進化系モデルが増えるなか、マッスルバックが多いのも今年の特徴です。そのなかで、ボクがもっとも進化を感じるのが「ヴェイパー プロ」。これまでヒール寄りにあった重心の位置を、形状を損なわず、異素材を使わずにフェースの中心にもってくることで、左へミスが出にくいのが特徴です。
これまでマッスルバックの進化といえば、重心を下げることで球を上がりやすくしたものがほとんどでした。しかし、重心距離の短いマッスルバックは、操作性が高い半面、つかまりがよく左に行きやすいというのがプロや上級者の悩みでした。それを解消するために誕生したのが、シャープな形状はそのままに、左を気にせず打てるマッスルバック。「ヴェイパー プロ」のほかにも、「J15MB」や「MP-15」など、オーソドックスな形状で左が怖くないマッスルバックが増えています。
ただし、「スリクソンZ945」「エイペックスMB」のように、球筋だけでなく距離のコントロールもできる操作性追求型のマッスルバックも健在。また、「TW727M」のように球が上がりやすいマッスルバックもあり、プレースタイルやゴルファーの技術レベルによって選択肢が広がっています。
また、単一素材のキャビティアイアンも進化しています。たとえば、「J15CB」や「スリクソンZシリーズ」のように、ソール形状にひと工夫加えることでライを選ばず打てるモデルや、「TC888フォージド」「ヴェイパー プロコンボ」「オノフ フォージドアイアン 黒」のように、違和感のない形状で、ロング、ミドル、ショートと番手ごとの役割を追求しているモデルもあります。
これらのアイアンに共通しているのは、つくり込みの細やかさ。見た目や打感を損なわず、性能の高いアイアンをつくろうという、メーカーの職人気質なこだわりによってつくり出されているのです。
最新の激飛びアイアンはロフトが立っているのに
グリーンに止められる大型でストロングロフトの激飛びアイアンも大きく進化しています。一番のポイントは飛距離性能に操作性の高さが加わったこと。これまで、激飛びアイアンといえば、低くて強い弾道でどこまでも飛んで行く、ユーティリティのような球質がほとんどでした。しかし、最新モデルは、「GⅢ」「イーゾーン Tri-G」「マジェスティ ロイヤルブラック」のように、7番のロフトが30度以下にもかかわらず、球の高さが出てスピンコントロールできるモデルが増えています。これらは、ロングアイアンやミドルアイアンの距離からグリーンに止められるので、確実にパーオン率が上がります。
つまり、最新の激飛びアイアンは飛距離不足に悩むゴルファーにとって、メリットはあってもデメリットが皆無です。よって、アイアンに飛びを求める人は、思いきってロフトが30度以下の激飛びアイアンを選ぶと、スコアもよくなるしゴルフが楽しくなると思います。
そう考えると、最新アイアンはアスリートモデルから激飛びモデルまで、アイアンに求められる、上がる、止まる、距離を打ち分けるという3つの要素を備えたうえで、それぞれの機能を発揮しているといえます。ですから、自分のヘッドスピードや技術レベル、また打ちたい球質によってモデルを絞り込んでいけば、アスリートにとっても、アベレージにとっても、スコアアップが狙えるかけがえのないモデルが見つかるでしょう。
最新モデルはアイアンに求められる3要素「上がる」「止まる」「距離を打ち分ける」のすべてを高いレベルで備えています!
鹿又芳典 かのまた・よしのり
ツアープロから一般アマチュアまで、その人のスイングに合わせたクラブを組み立てるクラフトマン。自身も競技ゴルファーとして試合に出場する。ブログも展開(golf-baka.com)
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