誰もが知っているようでじつは知られていないギアの真相に、カノマタが深く斬り込む新・ギア企画の第一弾。今回のテーマはロフトの選び方。いったいアマチュアは何度を選ぶべきか。また、何に注意して選べばいいのかを、クラブメーカーとツアー取材で徹底調査した。
構成=大西泉/写真=中野義昌、相田克己/協力=フォーティーン、ナイキ、ウルトラクラブス恵比寿/取材トーナメント=ハンダグローバルカップ、ニチレイレディス
解説=鹿又芳典 かのまた・よしのり
スイング論にも精通した人気クラブコーディネイターとして、あらゆるメディアで活躍中。千葉市のゴルフマジック店主。
ヘッドスピード+重心設定+プレースタイル…
ロフト選びの基準は1つじゃない!
ロフトといえば、単純にヘッドスピードが速い人は少ない(立った)ロフト、遅い人は多い(寝た)ロフトと思われがち。しかし、ロフトを決める要素はそれだけではないような気がする。そこで、可変式のカチャカチャではなく、固定式のロフトをつくり続けるフォーティーンで、正しいロフト選びのポイントを聞いた。
フォーティーン 松吉宗之さん
1997年フォーティーンに入社し開発部に所属。「ゲロンディー」を初め、「RM ウェッジ シリーズ」など数々の人気モデルの開発に携わっている。
まずクラブを選びそのクラブに合ったロフトを選ぶのが正解
「よく、『自分は9度しか使わない』とロフトを限定している人がいます。その多くは、『ヘッドスピードが速いから9度』『シングルだから10.5度じゃダメ』と、ヘッドスピード(以下、ヘッドスピード)やスコアに対するロフトのイメージにとらわれています。しかし、同じロフトでも重心位置やシャフトによって、打ち出し角やバックスピン量は変わります。例えば、バックスピンがかかりにくいヘッドや、球が上がりにくいシャフトで9度を選ぶと、球の高さが足りずキャリーが出なくなってしまいます。ですから、まずはクラブを選び、そのヘッドとシャフトに合ったロフトを探すことがロフト選びの絶対条件になります」
ロフト多
バックスピンが多くなるので吹き上がる高弾道になりがち。高く上がりランも出にくいが、曲がりは少ないので方向性は出しやすい。
ロフト適正
打ち出し角とスピン量のバランスがよく、キャリーが出てトータル飛距離が伸びる。いわゆる、高打ち出し・低スピンの飛びの弾道になる。
ロフト少
打ち出し角とバックスピン量が少なくなり、球が上がり切らずキャリーが出にくい。また、低スピンのぶん、弾道が不安定になりやすい。
ロフトが影響するもの
(1)
打ち出しの高さ
(2)
スピン量
(3)
つかまり
(4)
ボール初速
ロフトは、打ち出しの高さとスピン量に影響する。ほかにも、ロフトが多いほどボールのつかまりがよくなる。また、ロフトが少ないほど、ボールに対してフェース面が垂直に近い状態で当たるので、エネルギーロスが減少してボール初速が上がる。
ヘッドスピード基準だけでの選択は間違い!
では、自分にとって適正なロフトは何を基準に選べばいいのか?
「もちろんヘッドスピードは重要な要素ですが、アッパーやダウンブローなどスイング軌道によっても打ち出し角とバックスピン量は変わるので、同じヘッドスピードでも選ぶロフトは変わります。また、飛ばしたいならヘッドスピードに対して最大飛距離が出る高打ち出しやバックスピンがかかるロフトを選ぶべきですし、方向性をよくしたいなら、なるべくバックスピン量が増えるロフトを選んだほうが、曲がりにくくなります」
つまり、ヘッドスピードが速くても方向性重視の人は10.5度、ヘッドスピードが遅くてもアッパーブローでできるだけ飛ばしたいという人は9度が合うこともある。ロフト選びは、様々な視点から考える必要があるのだ。
浅重心+ロフト多、深重心+ロフト少のクラブがあった!
ロフトと重心設定の関係をわかりやすくカタチにしたのが、浅重心の「SLDR」と、深重心の「エッグワン」。「SLDR」はロフトを増やすことで高打ち出し、浅重心で低スピンを実現し、「エッグワン」はロフトを減らすことで低スピン、深重心で高打ち出しを実現している。発想は正反対だが、どちらも目指すところは、高打ち出し・低スピンの弾道で共通している。
テーラーメイド
SLDR
低スピンの強い球で飛ばせる浅重心モデルの先駆け。ロフトを12、14度まで上げて、ヘッドスピードが遅くても高打ち出し・低スピンで飛ばせる。
プロギア
エッグワン
ロフト設定は7.5度のみ。重心深度を極端に深くすることでヘッドがアッパー軌道になり、高打ち出し・高初速・低スピンの弾道を実現している。
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