連載コラム

三好徹-ゴルフ互苦楽ノート

若い二人はどう戦うのか

2013/12/18 21:00

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海外での活躍も期待されている、石川と松山。
14年度シーズンがはじまった米ツアーをかれらはどう戦うのか。

 アメリカのプロゴルフは10月から新しいシーズンに入った。その理由や事情については説明されているものの、日本ではまだ最終戦の日本シリーズやその前のダンロップ、カシオなど、大きな試合が残っている。さらにオーストラリアなどの南半球では、12月から夏シーズンの到来である。その季節感の差違は仕方ないとしても、来年9月のツアー選手権で14年度シーズンが終ることにしたアメリカPGAのスケジュールの作り方は独善的にすぎるのではないか。

 もっとも、何もゴルフに限らずアメリカという国は自国の都合第一である。しかし、中国もロシアも同じである。日本の声がかれらよりも低いのは、前世紀の出来ごとが影響しているのだろうか。それにしてもマレーシアや中国での試合がアメリカの公式戦に組みこまれたのは驚きである。

 基本的にゴルフに国境はないが、それはあくまでも公式論であって、マレーシアや中国の試合に勝てばマスターズに出場できるのか、と首をかしげる人もいるのではないか。また、試合に出場できる資格はいろいろあっても、現実には、遠い東洋への遠征には金がかかるし、試合コースの状況もよくわからない。ゴルファーもさまざまで自家用ジェットを持つか、チャーター機を使える人はほんの一握りにすぎない。広いアメリカ大陸を夫婦で交互に運転し、キャディは妻が担当するゴルファーも決して少くない。シード落ちは何とかパスするが、勝つまでに100試合以上を必要としたプロは何十人もいる。勝ったプロが涙を流して喜ぶのも当然なのだ。

 石川遼は昨年から参戦して苦労したが、最終の入れかえ戦で何とか残れた。一方、松山英樹は全米オープンにはじまる6試合でシード権を獲得した。そして新シーズンで両者は松山3位タイ石川2位タイで、よいスタートを切った。その前に松山はプレジデンツ・カップ出場の12人に選抜されて、ある程度の成績を残した。石川もその前に2回続けて選抜されて、タイガーやミケルソンらにその能力を認められていた。とはいうものの、ジャーナリズムは、いや、マスコミは成績不良になった選手には冷たい。松山に関しては些細な出来ごとも記事にするが、石川が不調になると、見向きもしない。正しいジャーナリズムは、そういう軽薄なものではないが、マスコミというのは別なのである。

 それはそれとして、両者がこの先どういうゴルフをするか。松山は全米、全英の出場資格をすでに得ているが、石川は出られるだろうか。両者とも勝たないまでも、今年末の世界ランク50位以内というマスターズの招待資格を確保できるか。それらの問題がゴルフファンの関心を集めるはずである。

 石川は2位タイの試合におけるドライバーの平均飛距離は317ヤードだった、とTVで伝えていた。海外の試合に出るようになってから、石川はドライバーで外国人たちに劣ることを思い知らされていた。かれらと同じくらいに飛んでいるが、石川のボールはラフが多いのに、かれらのボールはフェアウェイにある。その正確さの違いをなくそうとしてドライバーを振り続けた。練習時間の多くをドライバーにあてたことも本人が認めている。あえていうが、わたしは石川には思い違いがあったような気がするのだ。

 石川と外国人との飛距離はほぼ同じであっても、実は石川がフルスイングしているのに、外国人たちは80パーセントのコントロールショットで方向性も維持した。つまり石川がフェアウェイに球を置くためには80パーセントで振ればよいが、その場合は飛距離が落ちてくる。例えば、ババ・ワトソンはよく飛ばすし、マスターズに勝った。それはオーガスタがラフの薄い設定にしてあったからで、全米オープンのようなラフにしてあれば彼は勝てなかったと思う。現にラフの深い他のメジャーでは予選落ちしたりするし、ミケルソンが全米オープンに勝てそうで勝てないのは深いラフのせいなのだ。ことしの全英オープンでは、ミケルソンはドライバーをほとんど用いなかった。コースをどう攻略するか。本人の考え以外にスコットランドにわざわざきていたコーチのブッチ・ハーモンの助言もあったのではないだろうか。

 ニクラスは、飛距離はゴルファーの財産だ、という。また、彼につぐメジャー14勝のタイガーも飛ばし屋である。だから若いゴルファーはドライバーの練習に時間をかけた。ところが、メジャーに勝つ決め手はパットとグリーン周辺なのだ。ニクラスもタイガーも例外ではない。石川がドライバー第一をやめて、アプローチやパット練習に重点を移したのは、勝利への第一歩といってよい。その点では松山よりも一歩先へ行っていると思う。

 両者は来年9月までどういうスケジュールで試合をこなして行く計画なのか。メジャーは“狭き門”だから石川はそれをパスする成績をおさめる必要があるし、松山も全米プロの出場権はまだ取得していない。客観的に見て、基礎的体力は松山の方がやや上に思えるが、石川にはすでにきびしいツアーを一年間経験してきた有利さがある。コースだけではなく、旅から旅のハードな日常をどうやって過すか。さらには徹底した個人主義のアメリカ人たちとどうつきあうか。松山は英語はダメですというが、英語の会話能力を高める努力をしなければならない。イエスとノウの使い分け自体、日本人には厄介なのだが、人間味を理解してもらうことは成功への近道といってよい。ゴルフをきちんとすればいいじゃないか、という考え方もあるが、短期の旅行ではない以上、英語に時間を注ぐべきである。

 松山にはもうひとつ注文がある。コースでの彼の歩行はプロのスポーツマンのものとは思えない。時代劇の役者のように肩をゆする歩き方(強そうに見える)に近い感じだが、実は疲労のたまる歩行なのである。肩や腰を左右上下に動かさない歩き方、つまりやや抽象的だが、豹が獲物にそっと近寄るような感じでおとなしく歩くのが疲れない歩き方なのである。世界戦で同一組になったタイガーと並んで歩くビデオをよく見ることを勧めたい。タイガーが歩行に注意を払っていることは、シューズの改良に注文を出したことでも明らかである。

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